解析学(微分積分学)の勉強は「デデキントの切断」からが、おすすめ。

 長い梅雨が明け、酷暑の夏がやって来ました。四十四年前の夏も暑かったのを覚えています。数理学科という理数系の学部に入って、はじめて手にした数学書が、このブログで紹介する高木貞治著 「解析概論」でした。解析学を学ばれた方ならば一度は読まれたことがあると思います。

 確か学部の2年生だったと記憶しているのですが、函数論(複素関数論)の最初に習うのが、複素微分可能性と同値な条件の一つであるコーシー・リーマンの関係式です。必要条件の証明は、実部、虚部のいずれかのパラメータを固定することにより、証明することができます。一方、十分条件は「平均値の定理」を用いて証明します。

平均値の定理
 任意の区間微分可能な実数値関数の二つの点の平均変化率と一致する微分係数をもつ点が、二つの点の間に少なくとも一つ存在するという定理です。この定理は、解析学の重要な定理を証明する場面で用います。例えば、積分微分の逆の操作であることを示す「微分積分学の基本公式」があります。
 平均値の定理は「ロルの定理」を用いて証明しますが、その証明で鍵となるのが次の「連続関数の最大限・最小限の定理」です。微分可能な関数が連続になることは、定義から証明することができます。

最大限・最小限の定理(連続関数)
 閉区間の上で連続な関数は、区間内において最大値と最小値が存在するという定理が連続関数の最大値・最小値の定理です。言い換えれば、区間内に無限大になることはないという定理です。証明は二つのステップに分かれます。第一段として連続関数の有界性を示します。有界ならば上限値と下限値が存在するから、第二段として、その上限値と下限値が最大値と最小値になることを証明します。第一段の有界性は、有界ではないと仮定して矛盾を導きます。その過程で使用するのが。ボルツァノ–ヴァイヤシュトラスの定理です。

ボルツァノ–ヴァイヤシュトラスの定理
 はじめに、数列の部分列とは数列の中から無限個の項を取り出し、順番を保ったまま並べた数列を部分列といいます。正確に定義すると、数列と自然数から自然数への単調増加写像との合成写像を部分列といいます。
 有界な数列は収束する部分列をもつという定理がボルツァノ–ヴァイヤシュトラスの定理です。この定理の証明には区間縮小法という方法を使います。
 この定理の証明は、数列の有界性により、数列全体を含むような区間を考えてます。その区間を二分の一にし、(少なくとも)無限個の数列がある方の区間を新しい区間とします。この操作を繰り返し区間の列を作れば、各々の区間の左端は上に有界な単調増加数列となり、右端は下に有界な単調減少数列となります。かつ、区間の幅は限りなく0に近づきます。すなわち、区間の列は、ある点に収束します。したがって各々の区間の中から、順番を保ちながら部分列を作れば収束する部分列になります。ここで重要なのは
・上に有界な数列には、上限値が存在する。
・下に有界な数列には、下限値が存在する。
ということです。この存在を保証するのが「デデキントの切断」です。

 以上のことにより、微分。強いて言えば微分積分学の根底には、この「デデキントの切断」があることがわかります。
 このブログで紹介する高木貞治著 「解析概論」は、デデキントの切断について記述されている数少ない数学書の一つです。これから解析学を勉強する方に、おすすめの一冊です。